供給曲線とは価格に対する供給量の変化を読み解く道具

「右上がり」と聞くと、景気のいい話かなと思われる人も多いかもしれません。需要曲線とならんで経済学テキストの1ページ目に登場する「供給曲線」も、基本的には右上がりです。ある財の価格をみて、生産者がどのように動く(供給量を増やすか・減らすか)かが供給曲線から予想できます。”供給曲線は右上がり”以外の特徴もまとめてみましょう。
供給曲線とは、生産者全体が価格の変化に対してどのように供給量(生産量)を決めるかを示す曲線

供給曲線とは、価格の変化に対して生産者全体がどのように供給量(生産量)を決めているかを示す曲線です。ある財の価格をp、その財の供給量をqとします。価格pと供給量q以外の条件は変わらないと仮定して、pの変化に対するqの動きを読み解くために使われます。
ある財の供給量qは、その価格pが上昇すれば増加し、下落すれば減少します。このように供給量と価格には正の相関関係がみられ、「供給の法則」と呼ばれています。そして供給曲線は、供給の法則にのっとって、右上がりになるのが一般的です。
価格と供給量以外の変数を「与件」と呼ぶ
上では“価格pと供給量q以外の条件(変数)は変わらないと仮定”して説明してきました。このように変化に影響をおよぼす可能性はあっても、変化を分析するときに勘定にいれない条件を「与件」と呼びます。価格以外で、たとえば下のような条件が経済の変化に影響を与える可能性があるでしょう。
[供給サイド(生産者側)の与件]
- 技術
- 他の財(代替財)の供給量
- (資本・労働・土地などの)生産要素の価格変化
- 生産者に支払いの義務がある税の税率
- 生産者の人口 など
上に挙げたいずれかが変化したとしても生産者の供給量は変化する可能性があります。しかし価格pと供給量q以外の条件(変数)は、供給曲線を考えるときは勘定にいれません。一定と想定します。供給曲線は縦軸に価格p・横軸に財の数量qをとっていますが、縦軸と横軸に勘定されていない条件が与件といってもいいでしょう。
「供給の変化」と「供給量の変化」の違いは、供給曲線のシフトにある

与件が一定のままで価格pだけが変化するとき、供給量は下のように変化します。
・供給量は供給曲線に沿って変化する
→「供給量の変化」と呼ぶ
与件が一定の場合は供給曲線そのものに変化はありません。変化した価格pに対応して供給量qの値が変わるだけです。
対してひとつでも与件が変化するときは、供給曲線自体が移動(シフト)します。

・供給曲線自体がシフトする
→「供給の変化」と呼ぶ
(例:技術進歩で生産費が下がる→同じコストで供給できる財の量が増える→供給曲線が右にシフトする)
【参考書籍】
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