上級財・中級財・下級財は需要の所得弾力性やエンゲル曲線で見分ける
- 2021.09.21
- ミクロ経済学
- エンゲルの法則, エンゲル係数, エンゲル曲線, ミクロ経済学, 中立財, 予算線, 劣等財, 奢侈品, 必需品, 最適消費点, 正常財, 無差別曲線, 経済学, 需要の所得弾力性

給料が倍になったらあなたは何を買いますか?そのとき買おうと思ったものは「上級財」に当たると考えられます。ほかにも中級財や下級財に財は区別されるのですが、どういった見分け方をするのでしょうか。上級財・中級財・下級財の概要と、それぞれの見分け方を今回はまとめます。
上級財・中級財・下級財とは、所得変化による需要量の変化の違いによって分類された財
上級財・中級財・下級財とは、所得変化による需要量の変化の違いによって分類された財です。特徴を端的に説明すると下のようになります。
上級財(正常財):所得が増加すると需要量が増加する財 中級財(中立財):所得が増加しても需要量が変わらない財 下級財(劣等財):所得が増加すると需要量が減少する財
x財とy財の代替率を考えるために、無差別曲線と予算線を引いたグラフをイメージしましょう。財の価格がそのままであるとすれば、所得が変化しても予算線の傾きは変わりません。そのため所得が上昇すると、変化前と平行な関係のまま予算線が上にシフトします。
予算線のシフトによって所得消費曲線やエンゲル曲線が描け、上級財・中級財・下級財の区別がつくようになります。それぞれの意味合いや区別の方法をまとめていきましょう。
所得消費曲線とは、所得の変化にともなって移動する最適消費点の軌跡
所得消費曲線とは、所得の変化にともなって移動する最適消費点の軌跡です。予算変化にあわせて最適消費点がどのように移動するかをたどった線といってもいいでしょう。最適消費点は無差別曲線と予算線の接点であり、最適消費の条件を満たす2財の組み合わせを示す点でした。
上に予算線と無差別曲線の関係性を示すグラフを2つ書いています。このとき上左図はxもyもともに上級財のパターン、上右図はxが下級財・yが上級財のパターンです。所得が増えて予算線が上がると、最適消費点がAからA’に変化しました。その軌跡である線Cが所得消費曲線です。
このとき両方とも上級財であれば、上左図のように所得消費曲線は右上がりであるのが伺えます。しかし片方が下級財の場合における所得消費曲線は、上右図のように右下がりになるのです。
所得を使い切るためにはどちらかの需要量を増やすしかありません。そのときどちらかを買わなければ予算が消化できないため、必ずどちらかが上昇するのです。そのため両方とも下級財のパターンはありません。
エンゲル曲線は、所得消費曲線を得た2財のうち片方の財に着目して所得と数量との関係を示す
また所得の変化によって得られる曲線として「エンゲル曲線」が挙げられます。エンゲル曲線とは、所得消費曲線を得た2財のうち片方の財に着目して所得と数量との関係を描いたグラフです。家計の消費支出全体に占める食費の割合を示す「エンゲル係数」に基づいた曲線であり、家計の収入が下落するほどエンゲル係数が上昇する法則が見られます(エンゲルの法則)。上級財・中級財・下級財のカテゴリーでみれば、エンゲル曲線には下のような特徴があります。
上級財:右上がり(→所得が上昇するとともの需要量が増加する) 中級財:垂直(→所得が上昇しても需要量は変化しない) 下級財:右下がり(→所得が上昇するとともの需要量が減少する)
エンゲル曲線からみる需要の所得弾力性
所得の変化によって需要量がどのように変化したかを示す値に「需要の所得弾力性eI」があります。需要の所得弾力性eIは、エンゲル曲線のグラフと紐づけてチェックしましょう。
需要の所得弾力性eIは、所得がα%変化したときに需要量がβ%変化するとしたとき下の式で定義されます。
$$α=\frac{ΔI}{I} 、β=\frac{Δx}{x}$$
$$e_{I}=\frac{ΔI}{I}\div\frac{Δx}{x}=\frac{ΔI}{I}\times\frac{x}{Δx}=\frac{I}{x}\times\frac{ΔI}{Δx}$$
グラフから需要の所得弾力性をチェック
上の図にはエンゲル曲線が引かれています。エンゲル曲線上に打った点Aと原点Oを結ぶ直線の傾きがαと、点Aにおけるエンゲル曲線の傾きがβと同じ比率になるのが分かるでしょうか。αとβの大小関係を比べれば弾力的か非弾力的かが確認できます。
α<β→弾力性<1→非弾力的(eI<1) α=β→弾力性=1(eI=1) α>β→弾力性>1→弾力的(eI<>1)
座標から需要の所得弾力性をチェック
またGC/OGの比率からも需要の所得弾力性eIが確認できます。上の図では、エンゲル曲線と横軸が交わっている点をCとしました。このCの位置によって下のことがいえます。
Cが原点より右側→非弾力的(eI<1) Cが原点と一致→弾力性が1(eI=1) Cが原点より左側→弾力的(eI<>1)
弾力性についての詳しい解説は、供給の価格弾力性の記事も参考にしてみてください。
奢侈品・必需品は上級財
また所得弾力性を使ってカテゴライズした財に奢侈品と必需品がありました。奢侈品と必需品は両方とも上級財に当たります。あらためてカテゴライズを下に整理しました。違いをチェックしておきましょう。
eI>0→上級財→→eI>1=奢侈品・eI<1=必需品 eI=0→中級財 eI<0→下級財
こちらの奢侈品・必需品について解説した別記事を参考してみてください。
【参考書籍】
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