代替財・補完財・ギッフェン財の違いや特徴まとめ
- 2021.09.22
- ミクロ経済学
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◯◯財が経済学では多く登場します。上級財(奢侈品・必需品)・中級財・下級財の説明は別記事ですでに行いましたが、今回は代替財と補完財、そしてギッフェン財を紹介します。それぞれの特徴を整理していきましょう。
代替財とは、一定の比率で取り替え可能な関係にある財
代替財とは、一定の比率で取り替え可能な関係にある財です。たとえばウィスキーと焼酎、バターとマーガリン、電車とバスなどが代替財として挙げられるでしょう。x財とy財と一般化して、2財の組み合わせを考えるとします。するとたとえばx財の価格が下がったときに、需要がy財からx財に移る場合があります。このときyはxの代替財と呼べるのです。
とくにx財とy財が一定の比率で完全に取り替えが可能な場合を「完全代替財」といいます。完全代替財の2財をグラフで表すと上図のように無差別曲線が直線になるのが特徴です。価格変化に合わせて無差別曲線が移動したとしても、変化前後での傾きは変わりません。もちろん限界代替率も同じです。
補完財とは、片方の財の価格が変化したとき両方の需要量が同じ変化をする財
補完財とは、どちらか片方の財の価格が変化したときに、両方の需要量が同じ変化をする財を指します。価格が上がれば両方の需要量が下がり、価格が下がれば両方の需要量が上がります。代表例がコーヒーに対する砂糖です。コーヒーの価格が下がってコーヒーの需要量が増えれば、使われる砂糖の量が増えるのがイメージできるでしょう。
また補完財のなかでも、完全に補完関係が成り立つ財を「完全補完財」と呼びます。靴は完全補完財の代表であり、右だけの需要量が増えるケースは基本ありません。右の価格が仮に下がったとしても、右の需要が増えて、左が減るのは考えにくいです。
完全補完財の効用水準が増加するのは、同時に・同じ比率で両方の財が増加するときに限られます。そのためグラフにすると上図のようにL字型になる特徴があります。完全補完財の場合は代替効果が0になるのも特徴です。ぜひ確認してみてください。
“粗”がつくときは、ざっくりと価格効果を測定したときの値
完全代替財や完全補完財のように“完全”とつく以外にも、“粗代替財”や“粗補完財”と呼ばれる場合があります。粗がつく場合は、ざっくりと価格効果を測定したときの値を指すと覚えましょう。
代替効果と所得効果を合わせて総効果と呼び、2つに細かく分解するのをスルツキー分解と呼ぶのを別記事で説明しました。しかし粗がつく場合は、スルツキー分解をせずに、片方の財で価格変化があったときにもう片方の財の需要が増えたか・減ったかのみに着目するのです。
反対に粗がついていないときは、スルツキー分解して代替効果と所得効果を細かく計測します。片方の財で価格変化があったときにもう片方の財の代替効果による需要の増減がどれほどかを細かくみるのです。
ギッフェン財とは、価格が下がると需要量が減少する財
ギッフェン財とは、価格が下がるとその財の需要量が減少する財です。一般的な財は、価格が下がると多く売れる(需要量が増える)でしょう。しかしギッフェン財は逆なのです。
ギッフェン財の例としてマスクが挙げられるでしょう。コロナ禍で騒ぎ出した2020年初にはマスクが市中から消えて価格が暴騰する事態が起こりました。このとき粗悪品が安く出回ったのを覚えているでしょう。しかし感染症で騒いでいるなか、安いマスクでは不安だと売れ残りが多く発生したのです。このような特徴から、下級財のなかでも超下級財とギッフェン財は呼ばれます。
需要曲線を書いたときも、一般的には右上がりになるのに、ギッフェン財は右下がりになります。上の右図がギッフェン財の需要曲線です。とくに代替効果よりも所得効果が大きく、代替効果が打ち消されるケースがギッフェン財にあたります。グラフに線を書き入れて確認してみましょう。
また最後に、上級財・中級財・下級財・ギッフェン財の価格効果に対する代替効果・所得効果・総効果の変化を表にまとめました。丸暗記してもいいですが、ぜひ上級財・中級財・下級財の記事を読み返して確認してみてください。
【参考書籍】
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