利潤最大化生産量は、独占と完全競争の市場で求め方が違う

市場の状況を見極めて、企業は生産活動を行います。市場に競合他社が多くいる完全競争と、競合がいない独占の場合とでは利潤が最大になる条件がことなるのです。利潤の最大化を達成するにはどのようにしたらいいのかを確認してみましょう。
利潤最大化仮説とは、利潤の最大化を企業は行動の目的としているとの仮説
利潤最大化仮説とは、文字どおり、利潤の最大化を企業は行動の目的としているとの仮説です。利潤が最大になる最適生産量を検討して、企業は生産活動をおこないます。
企業が利潤最大化を検討するときに使うのが、市場の需要曲線Dです。価格をP・生産量をQとしましょう。すると需要曲線Dの式(需要関数)は$P=-aQ+b$(aとbは定数)…①と表せます。需要曲線Dの傾きaにマイナスがついているのは、市場の需要曲線Dは右下がりになるのが「需要の法則」に則っていると別記事でも紹介しました。
完全競争と独占の利潤最大化の違い
独占と完全競争の場合では需要曲線の形状に違いがあります。独占の場合は右下がり・完全競争では水平になるのでした。そのため利潤最大化条件が異なり注意が必要です。
完全競争市場の利潤最大化条件:価格P=限界費用MC
完全競争の場合は市場価格Pが一定と考えられます。市場価格が一定、つまり$①P=-aQ+b$の$a=0$で、傾きが0の水平な需要曲線をもとに企業は生産量を考えるのです。
しかし完全競争市場では、企業はプライステイカーとして市場価格に合わせて行動しなければなりません。よって価格P=限界費用MCになる生産量Qのときに、追加で稼げる利潤πを稼ぎ切り需給のバランスがとれます。価格P=限界費用MCとなる組み合わせが完全競争市場の状態における最適生産量を示してくれるのです。
※完全競争市場の利潤最大化条件はこちらの別記事で詳しく解説してあります。
独占市場の利潤最大化条件:限界収入MR=限界費用MC
独占の場合でも総収益$TR=P・Q$は同様です。しかし先述のとおり、独占の場合は需要曲線Dが右下がりになっています。上左図のように(P,Q)平面に需要曲線Dを書いたとき、P×Qで作られる四角形の面積から総収入の大きさを確認可能です。
また上右図には総収入TRを曲線で表しました。この総収入曲線TRは山のような形になっており、頂点(頂上)に対応する生産量Qが売上高が最高の点にあたります。
ただし売上高が最高な場合の生産量を選択すれば利潤が最大……とはなりません。利潤πは総収入TR-総費用TCの差であり、利潤最大化を検討するには総費用TCも考慮して総収入TRとの差が小さい場合の生産量Qを選択する必要があるからです。
さきほどの総収入曲線TRと、総費用線TCを上左図に並べてみました。利潤πは$TR-TC$の差がもっとも大きい生産量Q*のときだとこの図からわかるでしょうか。そして生産量Q*のとき、TC線・TR線それぞれ接線の傾きが上右図のように同じなっています。TC線の接線の傾き=限界費用MCであり、TR線の接線の傾きは限界収入MRです。以上から限界収入MR=限界費用MCのときに独占の場合は利潤が最大化する生産量Q*になるのが導けました。
【参考書籍】
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独占と完全競争の市場は、生産者の数と需要曲線の形状が違う 2021.11.01
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