完全競争市場の利潤最大化条件を2つの方法で確認!

完全競争市場の利潤最大化条件を2つの方法で確認!

完全競争市場では、財の価格は一定です。完全競争下で、企業が決められるのは生産量しかありません。ただし違う書き方をすれば、完全競争の条件下であれば企業は市場価格で生産物をいくらでも販売できます。もっとも大きな利潤を得るのが企業の行動目的ですが、それを達成するのに最適な生産量を検討する方法2つを今回紹介します。

完全競争市場での利潤最大化条件(1):総収入直線TRと総費用曲線TCとの垂直距離が最大

完全競争市場での利潤最大化

利潤最大化条件の確認方法ひとつ目は、グラフして線と線の間の距離を確認する方法です。総収入TRを示す直線と総費用TCを示す曲線を使用します。上図にあるTRとTCのように2本の線を書いてみましょう。

総収入TR(total revenue)を示す総収入直線TR

総収入TRは、価格p×生産量Q…①で求められます。財の市場価格pを傾きとして原点を通る直線が総収入直線TRです。$R=pQ$が①から導けます。

総費用(TC(total cost)を示す総費用曲線TC

総費用曲線を求めるときは$TC=可変費用VC+固定費用FC$から考えますが、図では$c=c(Q)$と簡略化しています。逆S字の形をしており、固定費用FCはグラフの縦軸切片であるbに相当します。詳しくはこちらの総費用曲線の解説記事をご確認ください。

ここで最大化を検討している利潤とは、総収入TRと総費用TCの差です。差利潤をπとして、$π=TR-TC…②$と式化してもいいでしょう。このπが最大のときはグラフの青矢印がもっとも大きくなるときです。青矢印の大きさは、総収入直線TRと総費用曲線TCとの垂直距離を示します。この垂直距離が利潤πと同じ値なのです。つまりグラフにおける総収入直線TRと総費用曲線TCとの垂直距離が最大になるときの生産量Q*が「利潤最大化生産量/最適生産量」といえます。

補足

①と②から利潤π=価格p×生産量Q-総費用TCが成り立ちます。この利潤式は企業行動を分析するもっとも重要な式です。ぜひチェックしておいてください。

完全競争市場での利潤最大化条件(2):市場価格p=限界費用MC

完全競争市場での利潤最大化

さらに上図(※既出)を観察してみましょう。すでに補助線などが引かれていますが、利潤最大化生産量Q*では総費用曲線TCの接線と総収入直線TRが並行になっているのが確認できるでしょうか。

総費用曲線TCの接線の傾きは限界費用MCを示しますが、利潤最大化生産量Q*では市場価格p=限界費用MCが成り立っているのです。逆をいうと、p=MCのときのQが利潤最大化生産量Q*ともいえます。

もう少しくわしく見てみましょう。生産量がQ*のとき総費用曲線TCの接線と総収入直線TRは並行であるため、それぞれの傾きは同じです。横軸から弧を描くように伸びた矢印と、補助線が交わって鋭角を成しているところの矢印が両方ともが同じ大きさ「p」を示しています。

完全競争市場での利潤最大化

上左図をみてください。上左図は、さきほど出てきたTCを少し右側に延長してさらに補助線を足したグラフです。

利潤最大化生産量Q*のところで総費用曲線TCの接線の傾きp*=総収入直線TRの傾きpになっています。総費用曲線TCの接線の傾きは、生産量Qが増加するにつれて一旦減少したのちに再び上昇します(減少から増加に転じる点を「変曲点」と呼びます)。その様子を示したのが上右図です。

上右図にある曲線MCとは、限界費用MCを示しています。生産量を1単位増やしたときの費用の増加分が限界費用MCと呼ばれるのでした。つまり限界費用曲線MCの高さは、限界費用MCを示し、また総費用曲線TCの接線の傾きと同じ値を示します。

よって利潤最大化生産量の条件を限界費用MCと市場価格pを用いて表す$p=MC$が成り立つのです。これは上右図における価格線とMC線の交点Eにあたります。価格線pと限界費用曲線MCが与えられている場合は、その交点が利潤最大化生産量を示す点だとすぐに確認できるのです。

市場価格pが仮に変わったときの企業の供給曲線Sも限界費用曲線MCから確認

完全競争市場での利潤最大化

また総収入直線TRは、傾きが一定で変わりません。収入Rと生産量Qの関係を示す上左図(※既出)においても、単純に右に伸びる直線であるのが確認可能です。これが価格pと生産量Qの関係を示す上右図(※既出)で水平な直線を描く根拠になります。

かりに市場価格が変化したとしても、上右図にある水平な直線が上下するだけなのがイメージできるでしょうか。よって市場価格が変化したとしても、つねに新しい価格水準に等しい限界費用曲線MC上の点に利益最大化生産量がなるのが分かります。つまり限界費用曲線MC=個別企業の供給曲線Sの関係がつねに成り立つのです。

【参考書籍】