生産関数のグラフは、総費用曲線をひっくり返したS字型

生産関数のグラフは、総費用曲線をひっくり返したS字型

生産関数には2つのパターンがあります。短期と長期の場合なのですが、物理的な時間の長短での区別ではありません。さらに曲線を書くと、S字型になって生産活動の特徴がみえてきたり、総費用曲線との関係などが伺えたりします。生産関数の特徴や、総費用曲線との関係性について今回はまとめてみました。

短期生産関数とは、固定的な生産要素が存在しているときの生産関数

短期生産関数とは、生産関数のうち固定的な生産要素(費用:資本Kや労働Lなど)が存在している場合を指します。“短期”とつくため、反対の意味の“長期”がつく長期生産関数も存在します。

2つの違いは、固定的な生産要素が存在するか否かです。長期・短期だからといって、物理的な時間の長短は関係ありません。グラフにしたとき、長期では原点を通る曲線(総費用曲線)が描けるのに対して、短期は縦軸切片があって原点を通らないのです。

生産量をQ・生産要素xの投入量をXおよび価格をw・総費用をTCとし、生産関数Q=f(X)が短期の場合を考えてみます。すると総費用TCと生産要素xの投入量Xとの関係は、$TC=wX+b$ (w,bは定数)と表せるでしょう。短期の生産関数の場合は、縦軸切片を示す定数項が存在するため+bが必要なのです。

生産関数

生産関数をグラフにすると、上図のようにS字型になるのが一般的です。生産量Qが少ないときは生産要素xの投入量Xを増やせば増やした分だけ生産の効率は上がります。曲線の傾きも大きくなるわけです。しかし生産を拡大しすぎるとXの投入量の増加に比べて生産量Qの増加が小さくなります。規模に関して収穫逓減と言われたりもしますが、ある点から曲線の傾きが小さくなってS字型になるのです。(ちなみに上図は原点を通る曲線のため、長期の生産関数をもとに書いた曲線と考えられます)

総費用曲線は、生産量に対してどれだけ生産要素(の量)が必要かを示す

総費用曲線は、生産量Qの値に対してどれだけ生産要素x(の量X)が必要かを示します。言い方をかえれば、生産量Qの水準とそれを生産するために必要な総費用TCの関係を示す曲線です。下の流れで総費用曲線を求めてみましょう。

総費用曲線を生産関数から求める流れ

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①生産関数のグラフにおける縦軸と横軸を逆さにする

②上下が逆になって、逆S字のグラフが出現
→→$X=g(Q)$の曲線とする

③$X=g(Q)$にXの高さをw1倍にし、定数項bの分だけ上方にズラす

④総費用曲線TC:$c=w_{1}g(Q)+b$が完成
※右辺だけに着目してc(Q)と表す場合もある

$w_{1}g(Q)$→可変費用VC(variable cost)
$b=w_{2}\bar{X_{2}}$→固定費用FC(fixed cost)

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総費用曲線

総費用曲線のグラフが完成しました。また上図の総費用曲線の式にもあるように、総費用が可変費用と固定費用の和であるのを意味しています。

$$TC=VC+FC$$

可変費用VCは、x1の価格w1がg(Q)の量に応じて変化するため“可変”とついています。対する固定費用FCは、$\bar{X_{2}}$の量ほど生産要素x2の料金w2が発生していますが、料金が一定であるため“固定”とつくのです。

生産関数と総費用曲線の関係

生産関数と総費用曲線の関係を理解するために、45度線モデルを活用する方法があります。45度線は正方形の対角線にあたり、横軸・縦軸に垂線を引くと値が同じになるのが特徴です。

下のように用いて、横軸の値と等しい値を縦軸で探すときに利用できます。流れをまとめましたので、チェックしてみてください。

準備:まずグラフを4つ用意して下のように並べる

左上(a):短期の総費用曲線
左下(b):45度線
右上(c):総費用の直線
右下(d):S字型の生産関数の曲線

※注意:横軸が右側では生産要素量X、左側では生産量Q

生産関数・45度線モデル・総費用曲線

分析:下の説明のようにグラフの点線を追ってみましょう

分析(1):短期の総費用曲線である

生産関数・45度線モデル・総費用曲線

・(c)の縦軸切片から固定費用FCが存在するのを確認
※固定費用FCがプラス→資本などの投入が固定的である

・(c)のTCと縦軸の交点(縦軸切片)から(a)に向けて点線を伸ばす

・(a)の縦軸切片とぶつかる
→総費用曲線TCは原点を通らず、縦軸切片がプラス
→→固定費用FCが発生しており、短期の総費用曲線だと分かる

分析(2):生産関数の曲線をひっくり返すと総費用曲線ができる

生産関数・45度線モデル・総費用曲線

・(d)のQ=f(X)上の任意の点から(b)に垂直、(c)に向けて平行な点線を伸ばす

・(b):45度線で直角に折れ曲がり、(a)の方に進む
→(b)は縦軸も横軸も同じQの値をとっており、(d)のQの値をそのまま(a)に伝えられる
・(c):総費用直線で直角に折れ曲がり、(a)の方に進む
→(c)で折れ曲がることで、(d)のXの値でのTCを示し、そのTCの値を(a)に伝えられる

・2本の点線からできる交点をつなげると(a)にある総費用曲線TCの形になる
→生産関数Q=f(X)と総費用曲線TCが同じ形状(ひっくり返して逆側にして求められる関係)であるのがわかる

【参考書籍】