生産者余剰とは生産者の手元に残った収入の総和

いくら儲かるのか。これは生産者が気にする数値の一つでしょう。財を生産するコストと市場価格を比べて求められる「生産者余剰」から儲けは予測でき、なおかつ生産量の目安も確認できます。生産者余剰の基本を押さえていましょう。
生産者余剰とは、限界費用が市場価格より低く生産者の手元に残った収入の総和
生産者余剰とは、財の限界費用が市場価格よりも低いために生産者の手元に残った収入の総和です。生産者の収入―可変費用で表されるため、利潤π+固定費用FCで求める場合もあります。「粗利潤」と呼ばれるケースもあるでしょう。
上にグラフを書きましたが、赤く塗りつぶした部分が生産者余剰に該当します。右上に伸びている赤い線は、限界費用曲線MCであり、生産物を1単位追加して生産するときに発生させる費用を表すものです。限界費用曲線の高さが、財を1個追加的に作るときに発生する費用を示します。
生産者余剰は、市場価格の水準を示す水平線と限界費用曲線が囲む領域の面積
上図(※既出)を具体的に確認していきましょう。例として、ある財を1個当たり20円で生産して生産者が売るつもりでいたとします。にもかかわらず実際の市場価格が100円であり、100円で売れたとしましょう。生産物が1個売れるたびに(100-20)=80円の利益出る状態です。
儲かるならばと生産者は生産量を増やします。すると10個作って売ろうとしたところで費用が大きくなりすぎて価格と同じになりました。つまり利潤がゼロになったのです。10個より多く作ってしまうと赤字が出るばかりで生産者に得はありません。よって市場価格が100円である場合、生産量を10個までにしておくのが生産者にとって合理的な判断です。またグラフにしたときに上の赤い三角で表される箇所の面積から生産者余剰が導けます。
少し言い方を変えれば、市場価格pの水準を示す水平線と限界費用曲線MCが囲む領域の面積が生産者余剰であるといえます。逆に限界費用曲線MCよりも下の台形で表される領域の面積から、総可変費用TVCが導けるのもチェックしておくと良いでしょう。
限界費用曲線MCと供給曲線Sは同じ線
上の例では価格を100円と想定しましたが、実際の市場価格pは変動します。市場価格pは、需要曲線Dと供給曲線Sの交点Eから求められ、あらゆる与件の影響をうけて変化するのでした。供給曲線Sは生産者の意向に応じて変化するわけですが、実は限界費用曲線MCと同じ線なのです(限界費用曲線MC=供給曲線S)。
反対に、需要曲線Dと同じ線を「限界評価曲線」と呼びます。消費者が財を1単位ほど手に入れるために払ってもいいと考える価格を示す曲線です。つまり限界費用曲線MCと限界評価曲線が交差した点Eでは、財1単位に払ってもいいと消費者が思っている価格(予算)と財1単位をつくるのに生産者がかける費用が一致します。このときは生産者余剰=消費者余剰になっているのもチェックしておきましょう。
生産と消費のミスマッチは長くは続かず、市場の調整メカニズムが働く
もし生産量がQ*以上になった場合、生産者の費用>消費者の予算になってしまうため、生産者は赤字になります。反対に消費者の目線で考えれば、予算よりも費用の方が高い財を買えるのでもっと買いたい状態です。
ただしこのミスマッチは長くは続かないため、生産量はQ*・価格はp*の組み合わせに戻ります。もしくはほかの与件が変わって限界費用曲線MC・限界評価曲線のいずれかが動いて市場価格pが変わる可能性もあります。
限界費用曲線MC=供給曲線Sや限界評価曲線=需要曲線Dと説明しましたが、ここから先の価格変化については均衡の安定について説明した下記の記事をご覧ください。
【参考書籍】
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操業停止点を総収入直線・総費用曲線や限界費用曲線・平均可変費用曲線から分析 2021.10.07
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