寡占のなかでも複占市場におけるクールノー均衡を求めよう

寡占のなかでも複占市場におけるクールノー均衡を求めよう

市場に参入している企業が数社しかない場合を「寡占」といいます。なかでもライバル企業2社だけで形成される市場を「複占」と呼ぶのです。複占市場では独特な関係性が成り立っており、両者にとって最適な反応を求めるプロセスも複数あります。今回は寡占・複占についてまとめていきましょう。

寡占とは、市場に少数の企業(生産者)しかいない状態

寡占とは、市場に少数の企業(生産者)しかいない状態を指す言葉です。独占と完全競争の中間ともいえ、少数の大企業で供給が賄われている市場が該当するといわれます。寡占の市場における企業は、ほかの企業の価格や生産量を無視できません。

また似たような言葉の独占や完全競争との違いも簡単に確認しておきましょう。

独占:市場に参入している企業が1社のみ

市場の需要曲線に直面し、自分の利潤πを最大化するように生産量と価格を企業は決める(プライス・メイカー)。

完全競争:市場の多くの企業が参入しているケース

他社の行動を考慮せずに、プライス・テイカーとして、自分の利潤を最大化するように個々の企業は生産量を決める。

複占とは、市場に2社しか生産者がいないケース

複占とは、寡占のなかでも、市場に2社しか生産者がいないケースです。多くの需要者を2社の生産者だけで分け合っている状態といえます。

“分け合う”といえば聞こえはいいですが、両者はライバル関係にあり“奪い合う”といった方が適切かもかもしれません。複占市場における両者の生産量の決定(意思決定)は「クールノー均衡」を用いて解説が可能です。

クールノーの複占モデル(クールノー均衡)

クールノーの複占モデル(クルーノー・モデル)とは、寡占モデルの一種です。同じ産業界にいる他企業の特定の生産量を一定として個々の企業が自己の利潤を最大化する生産量を決めるモデルを指します。クルーノー・モデルによって導かれる、複占市場の2企業にとって最適反応な組み合わせを「クールノー均衡」と呼びます。

自社の利潤πが最大化するように生産量を決定するのは企業活動の基本です。複占市場の企業を企業A・企業Bと呼ぶとしましょう。企業Bの生産量が固定されていると想定して、企業Aは利潤πが最大になる生産量QAを決めると考えられます。逆もしかりで、企業Aの生産量が固定されていると想定して、企業Bは利潤πが最大になる生産量QBを決めるでしょう。

両者が生産量を決定するとき、変数となりうるのは相手企業の生産量のみです。相手が生産量を多くして価格が下がりそうであれば、自分は生産量を抑えて市場価格の下落を避けるとの考え方ができます。逆に相手の生産量が少なくなりそうであれば、価格が上がるため自分は生産量を増やそうと考えるわけです。

等利潤曲線から反応曲線を得てクールノー均衡を導こう

クールノー均衡は、複占市場における2企業の「反応曲線」の交点が示す生産量の組み合わせから確認できます。反応曲線とは、「等利潤曲線」が示す最適反応の値を結んだ曲線です。反応曲線と等利潤曲線についてそれぞれ説明しましょう。

等利潤曲線とは、企業に同一の利潤πをもたらす2企業の生産量の組み合わせをしめす曲線

寡占・複占・クルーノー_反応曲線グラフ

上図には企業Aの等利潤曲線を書きました。等利潤曲線とは、企業に同一の利潤πをもたらす2企業の生産量の組み合わせをしめす曲線です。等利潤平面や等利潤直線を別記事で紹介しましたが、性質は同じく、内側にあって横軸に近づくほど高い利潤を表します。地図における等高線と同じ原理です。

複占市場のおける企業Aは、企業Bの生産量QBを固定的に予測して(所与として)自分の利潤が最大になる生産量を決定します。かりに生産量QBをQB1と予想したとしましょう。すると利潤の最大化を達成する点Fの生産量を企業Aは選択すると考えられます。同じQB1の場合でも点E・Gよりも点Fの方が内側の等利潤曲線と交わっているため、点Fの方が利潤が高いのです。

同じ要領で生産量QBをQB2と予想したときは点K、QB3と予想したときは点Lにおける生産量を企業Aは選択するはずです。企業Bの生産量QBの変化に合わせて最適反応の点は変わりますが、それらを結んだ曲線RAが企業Aの反応曲線になるのです。以上のように反応曲線は求めましょう。

反応曲線からクールノー均衡を導く

寡占・複占・クルーノー_反応曲線グラフ

上図には企業Aの反応曲線RAと企業Bの反応曲線RBが載っています。また上図の右側に企業A・Bが相互に推論をおこない点E(QA, QB)に辿り着く流れをイメージ図にしました。

相手の生産量変化に合わせたあらゆる最適反応を反応曲線から確認できるのでした。2企業の反応曲線が交わっている点は、両者にとって最適反応を実現した組み合わせを示しているのです。この点Eがクールノー均衡にあたります。相手の生産量を予想して自分の利潤πが最適になるように反応した結果が実際に起こった、つまり2社ともの予想が当たった場合といえるでしょう。

クールノー・モデルに似た「シュタッケルベルク・モデル」と「共謀(カルテル)」

クールノー・モデルに似たモデルを最後に紹介しておきましょう。

シュタッケルベルク・モデル

2企業の競争関係の中に先導者と追従者の関係を認めたモデル。先導者は自分の行動が相手企業に影響すると認識しながら自分にとって最適な選択をする。追随者は、先導者の決定を考慮しながら行動する。

共謀(カルテル)

利潤の合計を最大化するために、2社が文字通り共謀して生産量を決める。

【参考書籍】