最適消費の条件を相対価格・予算線・無差別曲線から求める

最適消費の条件を相対価格・予算線・無差別曲線から求める

“東京ドーム◯個分”と、土地の広さを示すときに表現される機会があります。◯平方メートルや◯ヘクタールなど具体的な数字で表現するよりも、東京ドームの個数換算の方がイメージしやすいのかもしれません。このような数の換算を買い物のときにあなたも自然と行っています。そこで出てくる相対価格や予算線について今回はまとめてみましょう。

相対価格とは、ある財1個の市場における評価を他の財の数量で表した値

相対価格とは、ある財1個の市場における評価を他の財の数量で表した値です。多数の消費者と多数の生産者による市場の客観的な評価が相対価格として測定できます。財に対する主観的な評価と市場で決まる客観的な評価(市場価格)を比較した比率といってもいいでしょう。「価格比」といった方がわかりやすいかもしれません。ただし価格とつきますが、円やドルの単位で表示される一般的な“価格”とは違う概念の値です。

たとえば1足1万円の靴と、1個2000円のメロンがあるとしましょう。このとき靴はメロン何個分に相当するでしょうか?答えは5個分です。計算は簡単で、靴1足の値段1万円÷メロン1個の値段2000円=5になります。この結果を経済学の用語を使っていえば「靴とメロンの相対価格は5」となるのです。価格とつきますが、円やドルなどの単位はつきません。

予算線とは、財の価格と予算(所得)の関係を示す直線

ものを買うとき、私たちは買うものの数量を自分で決めています。ただ制約として考慮しなければならないのにたとえば「予算(所得)」があるでしょう。いくら良いものでも、高すぎる(と予算と照らし合わせてあなたが主観的に判断した)場合は購入しないはずです。

予算線(予算制約線・価格線)は、財の価格と予算(所得)の関係を示す直線です。予算線と無差別曲線の関係性を明らかにすれば、消費者にとって最適な消費の条件が見えてきます。

消費者は、財の価格に影響を及ぼさない「プライステイカー」です。それを前提として、ある財の量をx・価格をpx、ちがう財の量をy・価格をpy、予算をIとすると下のような式が作れます。

$$p_{x}\times x +p_{y}\times y \leqq I …①$$

左辺は支出金額を、右辺は予算を示すのがわかるでしょうか。このときpxとpyは変化しません。プライステイカーは財の価格を変えられない立場だからです。つまり買い物をするときは、支出が予算以下であれば、xとyを自由に選択できるのを①は示す不等式なのです。

最適消費の条件

①をグフに書くと上のようになります。

縦軸・横軸と直線の交点をA・Bとし、原点Oとの三点を結んでできる△ABOを見てください。この△ABOは「購買可能集合」と呼ばれます。ABが予算線であり、ABよりも内側の点は予算I内で購入可能なxとyの組み合わせを示す点なのです。

予算線と無差別曲線

購入可能な組み合わせのなかでも、もっともお得な組み合わせ(であると消費者が評価するの)はどれでしょうか。それは効用がもっとも高い組み合わせといえるでしょう。

効用の高さを検討するのには無差別曲線を使うのが便利です。無差別曲線は、右上になればなるほど効用が高いのを意味します。そこで先ほどの①のグラフに無差別曲線U・U’・U’’を書き足してみましょう。すると下のようになります。

最適消費の条件

無差別曲線Uにおいて

無差別曲線Uは予算線ABと交わっています。U上にL・M・Nの3つの点を打ちましたが、同じ無差別曲線U上にある以上はどこでも効用は同じです。しかしUよりも右上にU’やU’’があります。無差別曲線は右上にあればあるほど効用が高いため、より効用が高い組み合わせを探さなければなりません。

無差別曲線U’’において

無差別曲線U’’は、UやU’よりも右上に位置して高い効用を得られる組み合わせを示しています。しかし予算線ABと接したり交わったりしていません。つまり予算オーバーな状態なのです。予算内で購入可能な組み合わせのなかから、効用がもっとも高い組み合わせを探しましょう。

無差別曲線U’において

無差別曲線U’は、予算線ABと接しています。その点をDとしましたが、Dよりも高い効用を得るには予算オーバーなのがイメージできるでしょうか。また効用が同じであったとしても、たとえばFでは予算オーバーになってしまいます。そのため予算内で購入可能なxとyの組み合わせはDであるとわかりました。

最適消費の条件は、無差別曲線と予算線が接していて、両者の傾きが同じ組み合わせ

Dのように無差別曲線と予算線が接している点を「消費均衡点(最適消費点・需要)」と呼びます。Dにおいて、無差別曲線の傾き=予算線の傾きという関係が成り立ちます。また無差別曲線と予算線の両方の傾きが負の符号をもつため、大きさだけに着目するために絶対値を用いて下の式が用いられるのが一般的です。

$$無差別曲線の傾き(の絶対値)=予算線の傾き(の絶対値)=\frac{p_{x}}{p_{y}}…②$$

無差別曲線と予算線が接している②が「最適消費の条件」といわれます。②の条件が成立するDにおいては、消費者個人の主観的な評価と市場全体の客観的な評価が一致しているのです。

【参考書籍】