ストックとフローとは?マクロ経済の基本やミクロ経済学との違いを確認

「経済学」というと、経済を大きな視点で見る「マクロ経済学」と、小さな視点で見る「ミクロ経済学」が二大巨頭といえるでしょう。そのうちマクロ経済学に今回は着目し、ミクロ経済学との違いや重要な指標である「ストック」と「フロー」について確認しましょう。
マクロ経済学とは
マクロ経済学とは、国民所得・雇用量・物価水準など世界・国レベルで経済全体の大きさや変化について考察する学問です。「マクロ」が「大規模な」という意味の英語である点からもイメージができるでしょう。
一方のミクロ経済学とは、家計や企業など、経済において最小レベルの意思決定や行動について考察する学問です。
■ミクロ経済学 生産者や消費者など「個々の視点」を対象とした理論性の強い学問。 ■マクロ経済学 国や世界など「経済全体」を対象とした実践的な学問。
マクロ経済学では、生産・消費・貯蓄・投資などのさまざまな変数を用います。これらの変数間の関係や均衡状態の大きさを研究対象とするのがマクロ経済学です。GDP(国内総生産)やCPI(消費者物価指数)などの指標を基にして、お金の流れを大きな視点で追っていく点がマクロ経済学の特徴といえるでしょう。
マクロ経済学における変数「フロー」と「ストック」
さきほど説明したように、生産・消費・貯蓄・投資など多くの変数をマクロ経済学では使います。それぞれの変数は「フロー」と「ストック」という2種類に分別が可能です。
フローとは
マクロ経済学におけるフローとは、ある一定期間(1年間など)において流通したと定義される商品・サービスの大きさ(量)を指す変数です。
【変数例】
消費(C)・投資(I)・貯蓄(S)・総生産額(Q)・中間消費(R)・国民所得(Y)・総供給(YS)・総需要(YD)・賃金総量(W)・利潤総額(P)など
ストックとは
マクロ経済学におけるストックとは、ある時点で残高として測定される大きさ(量)を指す変数です。
【変数例】
資本(K)・貨幣量(M)・債券(B)
具体的に説明してみましょう。2023年12月31日時点の預金残高がストックだとすると、2023年全体を通して預け入れた金額の総計や引き出した金額の総計がフローにあたります。
国(政府)の“借金”を例に挙げると、国債の残高に着目するのはストックを重視する場合といえます。国債とは政府が政策を行うための資金を得るために日銀などに売る有価証券です。借用書といってもいいでしょう。借金は、借り手には負債ですが、貸し手には資産になります。そのため「国債の残高が多い」とは、国民に対して政府が多くの支払義務を負っている、つまり国民が多くの資産をもっている状態です。
一方でフローを重視する場合は、今期の財政支出額などに着目します。財政支出とは、公共サービスの充実のために政府がお金を出すことです。国債による資金繰り(借入)はもちろん、税収から政府は予算を得ています。その予算のうち、いくらぐらいを政府が支出したのか(公共サービスの充実のためにお金を回したのか)を重視する場合はフローに着目する人といえるでしょう。
「財政支出が大きくなっている」といっても、国債の残高などストックに余裕があるかもしれません。「国債の残高が増えている」といっても、財政支出額が増えていれば、政府自らが借り入れを増やして国民の生活を向上すべく努力してくれているとの見方ができます。フローかストックのどちらかを見るのではなく、両方をバランスよく見る(定量的に比較できればなおよし)のがマクロ経済学においては重要です。
フローとストックの関係図
フローとストックの関係を単純化した図を用意しました。分かりやすさを重視するため、上図の経済圏では企業と家計だけが存在し、生産要素は労働と資本のみが用いられるとします。また、生産活動は企業のみ、消費活動は家計のみによって行われる前提です。
上図で示されている青色の線が財・サービスの流れ、黒色の線が貨幣の流れ、赤色の線が証券の流れを表しています。特筆すべきものをそれぞれ下記にまとめてみました。意味を確認していきましょう(内部留保などの企業の貯蓄や住宅投資などの家計の貯蓄も実経済では存在しますが、分かりやすさを重視するため本記事では考慮していません)。
<青色の線①>
家計による「消費財」の購入の流れ
→消費財の対価=消費C:消費財の購入のために家計が企業に支払った貨幣の支出(黒色の線)
<青色の線②>
企業による「投資財」の購入の流れ
→投資財の対価=投資I:投資財の購入のために企業が別の企業に支払った貨幣の支出(黒色の線)
※投資財とは、企業活動に必要な製品です。「資本財」(設備・機械・車両・事務用品など)と「建設財」(土木工事に使う資材や内装品)があります。
<青色の線③>
企業による「労働」や「サービス購入」の流れ
→労働やサービス購入の対価=所得Y(賃金Wと利潤Pの合計):労働やサービス購入を得るために企業が家計に支払った貨幣の支出(黒色の線)
<赤色の線>
証券各種の購入の流れ
→企業の「投資のための資金需要」と家計の「貯蓄による資金供給」をつなぐ
【参考書籍】
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