マーシャル的調整過程では価格に遅れて供給量が変化
- 2021.09.04
- ミクロ経済学
- マーシャル的調整過程, ミクロ経済学, 市場調整のメカニズム, 経済学

作ってしまったものは処分するのにも時間や費用がかかります。市場調整のメカニズムは3つの説が挙げられていますが、住宅市場のように価格変化よりも遅れて供給量が変化するメカニズムを「マーシャル的調整過程」と呼びます。どういった調整のメカニズムなのか、特徴をまとめていきましょう。
マーシャル的調整過程は価格変化に消費者も生産者も即対応
マーシャル的調整過程とは、価格が変化したときに消費者は敏感に反応するが、生産者の対応は遅れると想定された市場調整メカニズムです。供給量の変化が遅れるため、供給量を軸に調整過程を説明するモデルといってもいいかもしれません。
マーシャル的調整過程の代表例が住宅市場です。“一生に一度”といわれるぐらいの高額な買い物のため、家を買おうとしている人は価格の上下には敏感でしょう。対する家を売ろうとしている人は、価格が上がったからといって急に家を建てられるわけではありません。反対に下がったからといって供給量を減らすために家を壊すにしてもすぐすぐには壊せないのです。
マーシャル的調整過程での需要曲線と供給曲線の関係
マーシャル的調整過程における、需要曲線と供給曲線の関係性を確認しておきましょう。
均衡点Eのときの生産量q*と比較して…
■q<q*→品切れ(超過需要)→価格上昇→生産者量が遅れて増加→均衡の右側で需要曲線Dが供給曲線Sの上側にある
■q>q*→売れ残り(超過供給)→価格下落→生産量が遅れて減少→均衡の右側で供給曲線Sが需要曲線Dの上側にある
「均衡のマーシャル的安全性の条件」などと言われたりしますが、「均衡の右側で供給曲線Sが需要曲線Dよりも上側にある」のがマーシャル的調整過程で安定する条件です。また違う言い方では「供給曲線Sの傾きが需要曲線Dの傾きより大きい($\frac{ΔS}{S}\gt\frac{ΔD}{D}$)」とした方がわかりやすいケースもあるでしょう。
マーシャル的調整過程のグラフ

均衡のマーシャル的安全性の条件を満たしたグラフを書いてみました。均衡点Eの右側では、供給曲線Sが需要曲線Dよりも上側にきているのが確認できるでしょう。
またq1では超過需要・q2では超過供給が発生しているのが、グラフからも読み取れます。超過需要・超過供給を解消するために生産者が価格を調整して、均衡点E・均衡価格q*を目指すのです。
さらにq1のときには、品不足で需要者[消費者]が価格を釣り上げている状態といえます。このとき供給者[生産者]は、本当なら$p_1^S$だけもらえれば良いところを$p_1^D$の価格で取引ができるため、 $p_1^D-p_1^S$だけ多く望むより大きく儲けている状態です。 この$p_1^D-p_1^S$を「超過需要価格」とよび、均衡点Eにたどり着いて超過需要価格が0(価格がp*)になるように数量qが調整されていきます。
【参考書籍】
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