限界代替率から最適消費の条件を求める

経済学では、曲線の接線から読み取れる情報を多く活用します。たとえば無差別曲線の接線の傾きから求められる「限界代替率」を使えば、最適消費の条件が導き出せるんです。限界代替率とは何なのか、またどういった流れで最適消費の条件が導き出せるのかをまとめていきましょう。
限界代替率とは、財の1単位を別の財で何単位になるかを計測した値
限界代替率とは、ある財のひと単位について別の財の量で評価すると何単位になるかを計測した値です。marginal of substitutionの略でMRSと簡略化される場合もあります。消費者個人の主観的な評価を示す指標といってもいいかもしれません。
たとえばある財を靴、別の財をメロンだとします。ここで“靴の価値はメロン何個分の価値に相当するでしょうか?”と考えるとあなたは何個分と答えるでしょうか。かりに“靴1足はメロンが5個分と同じ価値”とあなたが感じたとしましょう。するとあなた個人の「メロンに対する靴の限界代替率MRSは5」となります。限界代替率MRSは人それぞの主観に左右さえるため、普遍的な数値ではありません。
限界代替率逓減の法則
限界代替率MRSは、ある財1つの増減によって同等だと感じる別の財の量がどれくらい増減するかを示す値です。先ほどは靴とメロンを使いましたが、2つの財をxとyとして無差別曲線を上のように書くと、MRS=-Δy/Δxで表されます(大きさだけに着目して「MRS=Δy/Δx」とされる場合もあります)。xを多くすれば、yを減らす必要があるため、ΔxとΔyは負の相関関係が成り立つのもチェックしてみてください。
また限界代替率は、財の数量が増加するにつれて次第に小さくなる特徴をもちます。はじめて買う靴はメロン10個分の嬉しさがあるのに対して、6足目ではもうメロン3個分程度しか満足できないのはイメージできるかもしれません。
これを「限界代替率逓減の法則」と呼びます。限界代替率逓減の法則は、原点に対して凸な無差別曲線において成り立ち、無差別曲線上を右に移動するにつれてその点における接線の傾きが次第にゆるやかになっていく特徴があります。
限界代替率=相対価格が消費の最適条件
相対価格の紹介をした別記事において、“靴の価値はメロン何個分の価値に相当するでしょうか?”とさきほど出したのと同じ問いを登場させていました。そこでは靴1足を1万円、メロンを1個2000円として価格を比較し、「靴とメロンの相対価格は5」と答えています。
上で出た限界代替率と同じ値に相対価格がなっていますが、限界代替率と相対価格には何か関係性があるのでしょうか。2つを比較してみましょう。
まず限界代替率は逓減するのを説明しましたが、具体的に上の表のように比較できたとしましょう。“多数の消費者と多数の生産者による市場の客観的な評価”である相対価格は不変ですが、“消費者個人の主観的な評価”である限界代替率は変化します。
そのため右にある相対価格は一定であるのに対して、限界代替率逓減の法則のため、左にある限界代替率は靴の数が増えるにつれてメロンの個数が減っています。それぞれの状況を丁寧に書き起こしましょう。
*靴3足目*
消費者個人のメロンの個数で表した靴の評価が相対価格を上回っている。
→同じ予算内で靴を増やしてメロンを減らせれば、この消費者はその選択を望むと考えられる。
*靴5足目*
消費者個人のメロンの個数で表した靴の評価が相対価格を下回っている。
→同じ予算内で靴を減らしてメロンを増やせれば、この消費者はその選択を望むと考えられる。
*靴4足目*
消費者個人のメロンの個数で表した靴の評価が相対価格と等しくなっている。
→購入の組み合わせは最適。
以上から、4足目の靴を買おうとしている限界代替率=相対価格のときがベストといえます。このような条件を「最適消費の条件」と呼ぶのも相対価格の記事で説明しました。
さらに最適消費の条件が成り立つときは下の条件も成り立つのでした。
$$無差別曲線の傾き(の絶対値)=予算線の傾き(の絶対値)=\frac{p_{A}}{p_{B}}$$
$\frac{p_{A}}{p_{B}}$は、価格比であり、相対価格です。また相対価格=限界代替率MRSであるのも上で説明しました。よって最適消費の条件下では下の4つが同じ比率になるのです。
・無差別曲線の傾き(の絶対値) ・予算線の傾き(の絶対値) ・相対価格(価格比pA/pB) ・限界代替率MRS
【参考書籍】
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