長期総費用曲線は、短期の総費用曲線を包み込む包絡線の形

経済学では、形が特徴的なグラフが登場します。その一つが「長期総費用曲線」の形状である“包絡線”といえるでしょう。包絡線がどのような形なのか、また長期と短期で総費用曲線にどのような違いがでるのか。長期総費用曲線の特徴についてまとめていきましょう。
長期費用曲線には固定的な生産要素や固定費用の概念がない
費用曲線は、長期と短期のものに分けられます。ただし長期・短期といっても、物理的な時間の長さの違いで分けられるのではありません。
短期の場合は、固定的な生産要素が存在し、固定費用FCがかかるのを前提しています。図に書いたときに原点を通らないのが特徴です。さらに固定要素の水準に応じて、費用曲線は何本でも描けます。別記事でもくわしく紹介しているので合わせて読んでみてください。
対する長期の場合は、固定的な生産要素がなく、固定費用FCもかからないと想定します。すべての生産要素が可変的であり、総費用TCは総可変費用と等しいともいえるでしょう。そのため図にしたときには原点Oを通る線になります。
グラフから長期費用曲線の特徴をチェック
短期と長期の費用曲線を上に描きました。短期にはSを・長期にはLを、各曲線のワードの頭文字につけて表記します。区別するときの目安にしましょう。
さきほども説明したとおり、短期費用曲線STCは無数に描けます。上ではSTC1とSTC2の2本を描きました。もっとあればさらにわかりやすいですが、短期費用曲線STC 2本の極小にあたる点が長期費用曲線と接しているのが確認できるでしょうか。
このように短期総費用曲線STCを下から包むように辿った形に長期総費用曲線LTCはなります。このような曲線の形状を「包絡線」と呼ぶのもチェックしておきましょう。
長期総費用曲線の3つの特徴
また長期総費用曲線LTCは、固定費用FCがないため、原点Oを通るのでした。合わせて押さえておいてください。最後にまとめると、長期総費用曲線LTCの特徴は下記の3つになります。
・固定的な生産要素ない(→固定費用FCがない) ・固定費用FCがないため、グラフは原点Oを通る曲線 ・短期の総費用曲線STC群を下から包み込むような形の曲線(包絡線)
【参考書籍】
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