代表的企業と産業の長期均衡とは新規参入が0のとき

儲かる商売には多くの企業が参入します。産業全体およびその業界における代表的な企業にとって安定した状態といえるのは新規参入がゼロのときなのです。代表的企業の長期均衡と産業の長期均衡のそれぞれをくわしく解説していきましょう。
利潤が出ている産業では新規参入が生まれる
上左図には、ある産業(業界)における代表企業の長期限界費用LMC・長期平均費用LACを示す曲線をそれぞれ描きました。この産業では上左図のように、市場価格pで代表企業にも利潤が生まれており、まだまだ新規参入がみられそうです。
新規参入企業が増えると、市場全体の供給量Qが増加し、供給曲線Sが右に移動します。もともとSだった供給曲線がS’に移動するとしましょう。その様子が上右図から確認できます。このように供給量が増加して供給曲線が移動するのを「供給の変化」と呼ぶのでした。供給の変化によって均衡点もEからE’に移動するのをチェックしておきましょう。
代表的企業の長期均衡は価格p=長期平均費用LAC=長期限界費用LMCのとき
均衡点E→ELの移動にともなってpだった市場価格もpLまで下落します。pLまで市場価格が下がると利潤が消滅し、もう旨味がある産業とはいえなくなりました。よって新規参入も止まります。つまり産業全体が安定したのです。
価格p=平均費用AC=限界費用MCの点で新規参入は止まりました。この価格p=平均費用AC=限界費用MCが産業全体や代表的企業にとってベストな状態なのです。グラフでいえば、価格を示す水平な直線pと長期限界費用曲線LMC・長期平均費用曲線LACの交点における価格pと生産量Qの組み合わせをチェックすれば確認できます。
また価格p=平均費用AC=限界費用MCのとき代表的企業は最適規模で生産しており、長期平均費用LACが最小値になっているのもチェックしておきましょう。
産業の長期均衡とは、代表的企業の長期均衡が果たされた、価格下落後の価格と生産量のペア
産業の長期均衡とは、価格pと生産量Qの組(pL,Q)の状態を指す言葉です。上右図(※既出)では、点ELにおいて産業の長期均衡が成り立っています。点ELに落ち着く経緯は上で説明したとおりです。盛り上がって利潤が出ている産業に新規参入企業が増加したために、供給量Qが増加して長期的に市場価格がpLまで下落するからといえます。すでに利潤はゼロになり、この産業への新規参入は見られないでしょう。
以上のように代表的企業の長期均衡と産業の長期均衡が達成されるのは、生産要素の価格や生産技術が長期的には変わらないとの仮定をもとにしています。新規参入によって市場規模の拡大や総供給量の増加があったとしても、長期にわたり個々の企業の平均費用曲線が一定と考えられているのです。
【参考書籍】
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