長期平均費用や長期限界費用を長期総費用曲線からチェック

長期平均費用や長期限界費用を長期総費用曲線からチェック

固定的生産要素や固定費用の有無で、経済学における長期か短期かが変わります。平均費用ACや限界費用MCにも長期のものがあり、短期の場合と似たような点や違った特徴が見られます。長期のときの平均費用や限界費用には、短期の場合と比べてどのような違いや関係性があるのかを確認していきましょう。

長期平均費用LACとは固定的な生産要素・固定費用がない場合の平均費用

総費用TCを生産量Qで割った値を平均費用ACと呼び、生産物を1単位作るのに必要な費用が平均費用ACを求めれば分かるのでした。その平均費用ACは長期と短期のものに分られます。

しかし長期・短期とは物理的な期間の長さを意味するわけではありません。違いは固定的な生産要素および固定費用の有無です。固定的な生産要素と固定費用が存在すると想定する場合を短期、存在しないとする場合を長期と区別します。この点は長期の総費用曲線と変わりません。長期の場合は頭にLを・短期の場合は頭にSをつけてLAC・SACと書くのも費用曲線と同じです。

長期総費用曲線LTCから長期平均費用LAC・長期限界費用LMCをチェック

長期の総費用曲線 グラフ

平均費用ACは、総費用曲線TC上にある点と原点Oを結んだ直線の傾きと同じ値です。長期の場合であっても考え方は変わりません。長期総費用曲線LTCとの関係で長期限界平均費用LACの確認が可能です。長期総費用曲線LTC上にある点と原点Oを結んだ直線の傾きが長期の平均費用LACと同じになります。

ちなみに上図の点Aは、長期総費用曲線LTCの接線を延長するとちょうど原点Oと交わるように描きました。つまり“長期総費用曲線LTC上にある点と原点Oを結んだ直線の傾き”と“長期総費用曲線LTCの接線の傾き“が点Aで等しくなるのです。

総費用曲線TCのとき、総費用曲線TCの接線の傾きから限界費用MCを求められる(TC=MC)のでした。長期の場合も同じ要領です。“長期の総費用曲線LTCの接線の傾き”は長期の限界費用LMCは等しくなります。つまり点Aでは長期平均費用LAC=長期限界費用LMCが成り立っているのです。

長期平均費用曲線LACと長期限界費用曲線LMCの関係性

長期の総費用曲線 グラフ

長期平均費用LACと長期限界費用LMCだけのグラフを上右図として載せました。長期平均費用曲線LACは上右図のようにU字型になるのが一般的です。上左図の長期総費用曲線LTC上の点をAよりも左右に変化させて確認してみてもいいでしょう。この長期平均費用曲線LACの形状から下の点が確認できます。

長期平均費用曲線LACの形状
右下がり→費用逓減
水平→費用一定
右上がり→費用逓増

上の2つの図はリンクしており、点Aも同じ生産量Qと費用をとっています。点Aでは、長期平均費用LAC=長期限界費用LMCが成り立っているのでした。さらにU字型をした長期平均費用曲線LACが点Aで最低になっています。長期平均費用曲線LACの最低点Aに対応する生産量Q*が「生産の最適規模」であるのも覚えておきましょう。

長期の総費用曲線 グラフ

長期と短期の平均費用ACと限界費用MCの関係は上図のようになります。長期総費用曲線LTCが短期総費用曲線STC群を下から包み込むような包絡線をしているのを別記事で紹介しました。長期平均費用曲線LACも、同じように、短期平均費用曲線SAC群を下から包み込む包絡線になります。

また長期平均費用LAC=長期限界費用LMCになる点Aで生産の最適規模になるのでした。上の2つの図では横軸が対応しています。生産量がQのときに生産の最適規模になるのですが、長期平均費用曲線LACがちょうど最低点のときに生産量がQになっているのもチェックしておきましょう。つまり長期平均費用LACが最小のときが生産の最適規模ともいえるのです。

【参考書籍】