等量曲線は生産曲面を水平にスライスして求める

消費の理論では、効用曲面を垂直に切って効用曲線・水平に切って無差別曲線を求めて消費者の消費行動に利用しました。同じ要領で、生産者の生産行動も三次元の曲面を垂直・水平に切って分析してみましょう。今回は水平方向に切り目を入れて求める「等量曲線」について紹介します。
等量曲線(等産出量曲線)とは、同じ生産量を生む生産要素量の組み合わせを示す線
底面に対して水平な切り込みを生産曲面に入れて得られるのが「等量曲線(等産出量曲線)」です。消費の理論における無差別曲線と同じような方法論で求めていると気づいた人もいるかもしれません。消費の理論の要領で、等量曲線のほかの特徴も捉えていきましょう。
効用曲面における無差別曲線は同じ効用を得られる財の組み合わせを示す線でした。同じように、等量曲線は同じ生産量を生む生産要素量の組み合わせを示す線といえます。上に図を書きましたが、同じ等量曲線上にあるAとBでは生産量Qも同じです。
また等量曲線は右上(北東)に位置するほど生産量が高い組み合わせを示します。上図でも、x1x2平面上で右上に位置している等量曲線の方が高い生産量であるのを表しているのです。A・BよりもCの組み合わせの方が生産量は高くなります。
等量曲線は右下がりで原点に対して凸が基本
さらにx1やx2が等量曲線に沿って変化したときの様子を考えてみましょう。かりにx1が増加(減少)したとすると、x2は反対に減少(増加)します。ある生産要素が減少すると、伴って生産量も減りかねません。そこで生産者はほかの生産要素を増やして以前と変わらない生産水準を維持しようとします。そのため等量曲線は右下がりになるのです。
また等量曲線は、原点に対して凸になっています。この形は、生産要素x1とx2のどちらかを偏って使うより、2つを一緒に使った方が生産力を高めるという意味合いを示しているのです。
技術的限界代替率とは、第1生産要素ひと単位の増加によって節約できる第2生産要素の量を示す値
等量曲線の傾きの絶対値は、「技術的限界代替率」と同じになります。技術的限界代替率とは、第一の生産要素(x1)がひと単位増加したのに伴って節約できる第二の生産要素(x2)の量を示す値です。技術的をつけずに、限界代替率と呼ばれたり、アルファベットでRTSと書かれたりします。
等量曲線が原点に対して凸になっていれば、等量曲線に沿って右にいけばいくほど傾きは次第に緩やかになっていきます。つまり傾きが小さくなり、技術的限界代替率が下がってくるのです。これを「技術的限界代替率逓減の法則」と呼びます。同じような名前の法則が消費理論のところで出てきたのを思い出したかもしれません。
限界生産物MPと技術的限界代替率RTSの関係
言葉を整理していくと、新たな関係性が見えてくるでしょう。上で説明した技術的限界代替率は下のような言葉で言い換えられます。
【技術的限界代替率RTS】 第一要素(x1)の量をひと単位追加したときに生産量を変えずに削減できる第二要素(x2)の量 =第二要素(x2)の量で測った第一要素(x1)ひと単位の価値
また生産曲線の説明ででてきた限界生産物MPは、下のように説明ができます。
【限界生産物MP】 生産要素(x1)をひと単位変化させたときの生産量の変化の程度 =生産物で測った第一要素(x1)ひと単位の価値
以上の2つの方法で測った“第一要素(x1)ひと単位の価値”は等しくなると考えられます。つまり技術的限界代替率RTSと限界生産物MPには下のような関係が成り立つのです。
$$技術的限界代替率RTS=\frac{第1要素(x_{1})の限界生産物MP_{1}}{第1要素(x_{2})の限界生産物MP_{2}}$$
これも同じような関係性が消費理論でも登場しました。対応する概念・性質を下にまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
【参考書籍】
-
前の記事
生産関数・生産曲線・生産曲面は消費理論と同じ要領で分析 2021.09.26
-
次の記事
コブ=ダグラス関数から、規模に関して収穫逓減・一定・逓増を考える 2021.09.28