無差別曲線・無差別曲面で効用が一定の2財の組み合わせをチェック

効用を比較しやすくする道具があります。「無差別曲線」と「無差別曲面」です。よく似た用語ですが、“線”と“面”の違いを見落としてはいけません。二次元の“線”と三次元の“面”との関係性なども今回チェックしていきましょう。
無差別曲線とは同じ効用を実現する2財の組み合わせを示す曲線
無差別曲線とは、2つの財からえられる効用水準が一定に保たれる場合における2つの財の組み合わせを示す曲線です。
財に対する主観的な評価を限界効用によって示すのには問題点が2つあると効用の記事で紹介しました。ひとつは効用が測定可能と推定している点(基数的効用)。もうひとつは、代替財や補完財など他の財の数的変化が当該財の限界効用に影響する可能性が無視されている点です。
そこで1つの財だけで考えるのではなく、2つの財の組み合わせと効用水準を結びつけて考えるようになりました。言い方を変えると、一方の財の評価を他方の財の数量で表す手法です。この分析手法を可能にするのが「無差別曲線」といえます。
無差別曲線の3つの特徴
無差別曲線には下の3つの特徴が説明できます。
①右上(北東方向)にある無差別曲線の方が高い効用を与える ②右下がり ③原点に対して凸
上図にU1とU2の無差別曲線を2本載せました。横軸でx財の消費量、縦軸でy財の消費量をしめし、2財の組み合わせからの効用U(x,y)を示している図です。さきほど紹介した3つの特徴が上の図からも伺えます。上図ではU1よりもU2の方が右上に位置しているため、①からU2の示す組み合わせの方が効用は高くなります。
また効用の値を一定に保ちつつ、たとえばx財が増加すれば、y財の量は減少しているのが確認できるでしょうか。互いに無差別な点A(xA,yA)と点B(xB,yB)とにおいて、xA<xBならばyA>yBが成り立ちます。つまり効用を一定に保ちながら1つの財を増やすためには、もう片方の財の量を減らさなければならないのです。
効用曲面とは2つの財の組み合わせと効用Uの関係をしめす三次元曲面
2つの財の組み合わせとその効用Uの関係をしめすときに「効用曲面」が用いられるケースもあります。効用曲面とは、2つの財xとyを組み合わせた平面上の点(x,y)における高さを効用Uとして表す三次元の曲面です。
効用曲面を見るときは、地図から山の高低差を見るときと同じ方法でおこないます。山の高さを示すのに用いたれた“等高線”を覚えているでしょうか。等高線は、山を水平にスライスすると想定したときの切り口にあたる面を縁取りした線です。地図は山を上から見下ろしたように描かれ、“等高線で繋がっている地点は同じ高さ”・“等高線の内側の方が高い”・“等高線の外側の方が低い”などが見て確認できます。
上に効用曲面の図がありますが、等高線のように曲面上に線が引かれているのが分かるでしょうか。このような効用曲面の等高線の形状から消費者の嗜好が分析できます。山の等高線と同じく、効用曲面の等高線も同じ線上にある点同士は高さが一緒です。効用曲面の場合は、効用が一緒であるのを意味します。つまり等高線上にある2点は消費者にとって同じ効用を得られる点なのです。
無差別曲線と無差別曲面の関係
上の図には、x軸とy軸からなる平面にA・B・Cの3点が書かれています。また曲面に線が引かれており、そのxとyの値に応じた影のような点線をxy平面にも引きました。この点線が山における等高線であり、無差別曲線なのです。
AとBは同じ等高線上にあるため効用Uが同じ値になっています。AやBのように、等高線上にある2点は「無差別」な関係であると呼ばれます。無差別曲線の“無差別”はこのような意味合いで付けられたのでした。
くわえてAやBよりもxy平面の右上にあるCは、より高い効用Uの値をとっています。反対に左下にいけばいくほど効用Uが低くなるのもイメージできるでしょうか。ぜひ書き加えて確認してみてください。
【参考書籍】
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