コブ=ダグラス関数から、規模に関して収穫逓減・一定・逓増を考える
- 2021.09.28
- ミクロ経済学
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努力は裏切らない…と思いたいものです。しかし仕事では努力したのに成果が出なかったり、反対にまったく苦労せずに簡単に成果が出たりする場合があります。そんな労働と生産物の関係を示す概念を経済学的にアプローチしてみましょう。
規模に関して収穫逓減・一定・逓増
投入物xを増やして生産量Qを増やすことを“規模を拡大する”と呼びます。また規模拡大による生産量Qへの影響は、増やした投入物xと増えた生産量Qの関係性を生産関数(生産曲面)から読み取って計測が可能です。
規模を拡大したときの投入物xと生産量Qの関係は下の3つで表されます。違いに着目してみましょう。
規模に関して収穫逓減
投入物xを増やした分に比例するほど生産量Qが増えない
=生産量Qを増やそうとしたときに必要になる投入物xの量がどんどん多くなる
→等量曲線の間隔がだんだん大きくなっていく
規模に関して収穫一定
投入物xを増やした分に比例して一定の割合で生産量Qが増える
=生産量Qを増やそうとしたときに必要になる投入物xの量が変わらない
→等量曲線の間隔は一定
規模に関して収穫逓増
投入物xを増やした分よりも高い比率で生産量Qが増える
=生産量Qを増やそうとしたときに必要になる投入物xの量が段々少なくなる
→等量曲線の間隔がだんだん小さくなっていく
規模に関して収穫逓減の具体例
たとえば生産規模をいままでの27倍(33)にするとしましょう。つまり投入物xを27倍多く使うのです。しかし生産量Qが9倍(32)にしかならないとしましょう。投入する財をx1・x2とすると、この場合の生産関数は下のように表せます。
$$Q=f(x_1^\frac{1}{3},x_2^\frac{1}{3})=x_1^\frac{1}{3} \cdot x_2^\frac{1}{3}$$
このとき(x1,x2)=(1,1)…[A]と(x1,x2)= (33,33)…[B]の場合を比べてみましょう。[A]から[B]へはx1とx2ともに33倍=27倍になっています。しかし生産量QはQ=1からQ=3×3=9へと9倍しか増加していません。こういった生産関数が“規模に関して収穫逓減”のケースにあたります。
コブ=ダグラス型生産関数とは、資本Kと労働Lが代替可能との前提で作られた生産関数
規模に関する収穫の程度を測るときには、「コブ=ダグラス型生産関数」を用いて分析が行われます。コブ=ダグラス型生産関数とは、資本Kと労働Lが代替可能との前提で作られた生産関数です。シンプルに「コブ=ダグラス関数」と書かれる場合もあります。下がコブ=ダグラス型生産関数の公式です。
$$Q=AK^{α}L^{β} (α>0,β>0,α+β=1)…②$$
名前のとおり、コブとダグラスによって考え出された生産関数で、新古典派の代表的な生産関数として知られています。消費者の効用関数(無差別曲線)・企業の生産関数・マクロの生産関数など広く利用できるので別記事でも登場するでしょう。
コブ=ダグラス型生産関数から規模に関して逓減・一定・逓増を測る
コブ=ダグラス型生産関数は、生産の弾力性を切り口に考えると理解しやすいです。弾力性といえば、たとえば資本Kが増加したとき生産量Qがどの程度増加するかを示す値は「資本の生産弾力性」と呼ばれるのでした。わからない人は弾力性について解説した別記事を参照してから戻るのをおすすめします。
このとき資本の生産弾力性をα、労働の生産弾力性をβとしましょう。するとαとβには下のような性質があるといえます。
$$\begin{eqnarray}
α&=&\frac{K}{Q}\cdot\frac{ΔQ}{ΔK}…③\\
&(&α=0.5→資本Kが1\%増加すると生産量Qは0.5 \% 増加する)
\end{eqnarray}$$
$$\begin{eqnarray}
β&=&\frac{L}{Q}\cdot\frac{ΔQ}{ΔL}…③\\
&(&β=0.5→労働Lが1\%増加すると生産量Qは0.5 \% 増加する)
\end{eqnarray}$$
$$\begin{eqnarray}
&α&+β=1\\
&&(2つの生産弾力性の和が1なら、資本Kと労働Lの両方が1\%増加すると\\
&&生産量Qもちょうど1\%増加する[規模に関して収穫一定])
\end{eqnarray}$$
ちなみに2つの生産弾力性の和から規模に関して収穫逓減・逓増かも分かります。3つまとめると下のようになりますのでチェックしておきましょう。
α+β=1→規模に関して収穫一定 α+β>1→規模に関して収穫逓増 α+β<1→規模に関して収穫逓減
2つの生産弾力性から限界生産性を求める式
このような特徴を持つ関数として2つの弾力性α・βを使って(対数式から)、②の生産関数に辿り着いたのです。さらに上に③が2つありますが、それぞれを下のように変形させてみます。
$$\frac{ΔQ}{ΔK}=α\cdot (\frac{Q}{K})$$
$$\frac{ΔQ}{ΔL}=β\cdot (\frac{Q}{L})$$
このQに②を代入してみましょう。
$$\begin{eqnarray}
\frac{ΔQ}{ΔK}&=&α\cdot (\frac{Q}{K})=α\cdot (\frac{AK^{α}L^{β} }{K})=αA\cdot (\frac{K^{α}}{K} \cdot \frac{L^{β}}{K})\\
&=&αA\cdot(\frac{K^{α}}{K} \cdot L^{β})=αA\cdot(K^{α-1} \cdot L^{β})\\
&=&αA\cdot(K^{-β} \cdot L^{β})=αA\cdot (\frac{L}{K})^{β}
\end{eqnarray}$$
$$\begin{eqnarray}
\frac{ΔQ}{ΔL}&=&β\cdot (\frac{Q}{L})=β\cdot (\frac{AK^{α}L^{β} }{L})=βA\cdot (\frac{K^{α}}{L} \cdot \frac{L^{β}}{L})\\
&=&βA\cdot(K^{α} \cdot \frac{L^{β}}{L})=βA\cdot(K^{α} \cdot L^{β-1})\\
&=&βA\cdot(K^{α} \cdot L^{α-1})=βA\cdot (\frac{K}{L})^{α}
\end{eqnarray}$$
最終的には下のように、限界生産性を簡単に求める式が出来上がります。もしくは偏微分ができる人は、②をKとLで偏微分してこの式を求めてもよいでしょう。
$$\frac{ΔQ}{ΔK}=αA\cdot (\frac{L}{K})^{β}$$
$$\frac{ΔQ}{ΔL}=βA\cdot (\frac{K}{L})^{α}$$
【参考書籍】
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