費用最小化条件を等生産量曲線と等費用線から導く

利潤は大きく、費用は小さく。これはビジネスの基本かもしれません。今回は費用が最小になる条件「費用最小化条件」を二つの線「等生産量曲線」・「等費用線」から導いてみましょう。
等生産量曲線(等量線)とは、ある一定の生産量をあげるための生産要素の組み合わせを示す曲線
等生産量曲線(等量線)とは、ある一定の生産量をあげるための生産要素の組み合わせを示す曲線です。上図にある等生産量曲線は、x1財とx2財の組み合わせにしています。ほかにも資本Kを縦軸・労働Lを横軸において具体的に考える場合もあるでしょう。
また上図のように平面で考えるだけでなく、三次元の生産曲面を用いての分析も可能です。下に図を書きましたが、一定の生産量$\bar{Q}$でQ軸切片を定めて横にスライスしたときの断面のイメージです。いずれも右下がりの曲線になります。
等費用線とは、生産コストが一定となる生産要素の組み合わせを示す直線
等費用線とは、生産コストが一定となる生産要素の組み合わせを示す直線です。消費者理論で登場した予算制約線(予算線)と同じ役回りの線といってもいいでしょう。生産者が生産活動に利用できる予算を示す直線です。グラフにしても、上図のように、予算制約線と同じような右下がりの直線になります。
x1財とx2財を比較する場合、$w_{1}x_{1}+w_{2}x_{2}=p\bar{Q}-\bar{π}$が等費用線の式です。生産量Qと利潤πが固定されて、変数は生産要素のx1とx2だけになっています。x1の価格(生産要素価格)をw1・x2の価格をw2・Qの価格をpで表しているのです。
また具体的な表現におきかえて、資本Kと労働Lの2つを比較して検討する長期な場合も紹介しておきましょう。今回は生産費用を最小化するのがテーマです。そのため生産に発生するすべての生産費用(総費用TC)は$TC=wL+rK$で表せます。Lは労働・wは賃金率・rは利子率・Kは資本を意味するのでした。これを変形して、$K=- \frac{w}{r}L+\frac{TC}{r}$として等費用線を求める場合もあります。
費用最小化点とは、生産要素のあらゆる組み合わせのうち、生産費用の制約のなかでコスパが最高の点
さきほど簡単に説明したとおり、生産曲面から等生産量曲線を求めてみましょう。すでに登場した図ですが、上左図に生産曲面と等利潤平面があります。そこに生産量Qを固定して、底面と平行な切り目を入れてみましょう。上左図では薄赤色の三角形になっていますが、$\bar{Q}$のままで生産曲面をスライスすると、上右図のような平面が得られます。
上右図では、生産曲面の断面から等生産量曲線がえられる様子を表しました。生産局面の縁にあたる曲線が等生産量曲線に該当します。また薄赤色の直角三角形の斜辺になっている直線は等費用線です。生産要素価格(w1・w2)が一定のとき、一定の生産費用の範囲内で組み合わせ可能な生産要素x1・x2の量を示しているのを確認してみてください。こちらも消費者理論における予算制約線と同じような解釈が可能です。
さらに消費者理論と同じように、等生産量曲線と等費用線が接する点が分析のポイントになります。上右図のA点が該当しますが、A点は費用最小化点に当たる点です。生産要素のあらゆる組み合わせのうち、生産費用の制約のなかで、もっとも高いコストパフォーマンスを示す点にあたります。
費用最小化条件は、等費用線と等生産量曲線が接して、両者の傾きが同じ
利潤と生産量を固定して等費用線:$w_{1}x_{1}+w_{2}x_{2}=p\bar{Q}-\bar{π}$を求めました。これを整理すると等費用線の傾き:$- \frac{w_{1}}{w_{2}}$が出てきます。また等生産量曲線と接している点Aにおいて、等費用線の傾きと等生産量曲線の傾きが同じです。等生産量曲線の傾きは、x1の限界生産物(MP1)をx2の限界生産物で割った値、つまり技術的限界代替率にあたります。よって下の式が成り立つわけです。
$$\frac{MP_{1}}{MP_{2}}=RTS=\frac{w_{1}}{w_{2}} …① → \frac{MP_{1}}{w_{1}}=\frac{MP_{2}}{w_{2}}$$
※等費用線も等生産量曲線も傾きが負のため符号を整理しました。
費用最小化条件は利潤最大化条件から導ける
さきほどは「もっとも高いコストパフォーマンスを示す点」がA点だと説明しましたが、言い方を変えてみましょう。「少なくともの量を生産する生産要素の組み合わせの中で、もっとも生産費用が小さい組み合わせが点Aの組み合わせ」です。これは総費用$TC=p\bar{Q}-\bar{π}$であるのも意味しています。
もともと上左図(※既出)は、薄赤色の三角形が薄緑色の平面(等利潤平面)に突き刺さっているように描かれていました。これは生産量を固定して(x1・x2)平面と平行な面を描いたとき、利潤最大化点Bを通るのが生産量で固定した場合であるのを意味しています。
利潤を最大化するには、生産曲面と交わりを持つ範囲内で等利潤平面をできるだけ上に持っていく必要がありました。結果、生産曲面と等利潤平面がお互いに接する位置である点Bまで等利潤平面をもっていくと利潤が最大になるのです。
つまり点Bは利潤を最大化する生産要素x1・x2の量と生産量Qの組み合わせを示しています。上右図は、①は費用最小化条件であり、それが利潤最大化条件から導かれるのも示していたのです。利潤が最大であるB点では、費用も最小になっていると言い換えた方が分かりやすいかもしれません。
ただし費用最小化①だけでは、利潤最大化を説明するには十分ではありません。利潤πを固定して分析していたからです。これは①に価格pが含まれておらず、利潤と結びつけられない点から説明できます。
【参考書籍】
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