消費者余剰とは市場価格が安いために使えず消費者の手元に残った予算の総和

消費者余剰とは市場価格が安いために使えず消費者の手元に残った予算の総和

“お得”の尺度は消費者ごとで違います。同じ商品をみたとしても、ある人は高いと思い購入を断念したとしても、ある人は安いと思って追加での購入まで検討する場合があるです。この”安くてお得だ“とある消費者が感じた心理的な評価を商品の価格に置き換えて換算したのが「消費者余剰」です。グラフにすると、いくつまで買ったらお得かがチェックできるようになります。基本的な意味と一緒にチェックしていきましょう。

消費者余剰とは、市場価格が安いために使えず消費者の手元に残った予算の総和

消費者余剰とは、ある財を購入するために支払ってもいいと消費者が準備している予算より市場価格の方が低いため、消費者の手元に残った予算の総和です。もしくは財の購入から得られる満足度を価格で評価した値(限界評価・限界便益)から実施に支払った額を差し引いた部分の総和ともいえます。

消費者余剰

上図の青く塗りつぶした分が消費者余剰に該当します。右下に伸びている青い線は限界評価曲線であり、財を1単位追加して購入するときに必要な費用を表すものです。限界評価曲線の高さは、財を1個追加的に購入するときに必要な費用を示します。

消費者余剰は市場価格の水準を示す水平線と限界評価曲線が囲む領域の面積

消費者余剰

図を具体的に確認していきましょう。例として、ある財が1つ当たり100円で売られていたとします。ある消費者は、その財が欲しくて1つ買えるなら150円払ってもと考えていました。もちろん売買は成立します。このときこの消費者は$(150-100)=50$円を得したと思うでしょう。

”こんなに安く買えるならば”と購入量を増やすのが消費行動としては合理的です。ただし良い財であっても同じものを何個も買えるとなると心理的な価値が目減りします。なかなか買えないから価値があるのであって、簡単に買えるなら高いお金を出したいと思えなくなるわけです。

すると10個目を買うとしたら100円ならいいかなと思ったとしましょう。これ以上安くなれば買っても良いのですが、市場価格はイチ消費者の意向では変わりません。そのため100円よりも安く買うのは難しいと考えられます。11個以上になると、元々の予算より支出の方が大きくなってしまうので消費者に得はありません。

よって市場価格が100円である場合は購入量を10個までにしておくのが消費者にとって合理的な判断といえます。さらにグラフにしたときに上の青い三角で表される箇所の面積から消費者余剰が導けるのです。少し言い方を変えれば、市場価格の水準を示す水平線と限界評価曲線が囲む領域の面積が消費者余剰であるといえるでしょう。

限界評価曲線=需要曲線

消費者余剰

ちなみに上の例では価格を100円と想定しましたが、実際の市場価格は変動します。市場価格は、需要曲線Dと供給曲線Sの交点Eから求められ、あらゆる与件の影響をうけて変化するのでした。需要曲線Dは消費者の意向に応じて変化するわけですが、実は限界評価曲線と同じ線なのです(限界評価曲線=需要曲線)。

反対に、供給曲線と同じ線を「限界費用曲線」と呼びます。生産者が財を1単位ほど生産するために払わなければならない費用を示す曲線です。つまり限界費用曲線と限界評価曲線が交差した点Eでは、財1単位に払ってもいいと消費者が思っている価格(予算)と財1単位をつくるのに生産者がかける費用が一致しています。このときは生産者余剰=消費者余剰になっているのもチェックしておきましょう。

もし生産量がQ*以上になった場合、生産者の費用>消費者の予算になってしまうため赤字が発生しています。反対に消費者の目線で考えれば、予算よりも費用の方が高い財を買えるのでもっと買いたい状態です。ただこのミスマッチは長くは続かないため、生産量はQ*・価格はp*の組み合わせに戻ります。もしくはほかの与件が変わって限界費用曲線・限界評価曲線のいずれかが動いて価格が変わる可能性もあります。

【参考書籍】