効用最大化の条件4つをチェックしよう!

レントゲンのように、立体を切断して断面を覗くと新しい発見があります。効用曲面を水平方向にスライスして得られる無差別曲線については別記事でまとめました。今回は、効用曲面を垂直方向にスライスして得られる「効用曲線」にまつわる情報をまとめてみましょう。
効用曲線とは、1つの財の量のみを変数とする曲線
効用曲線とは、ほかの全ての財の量を固定したうえで、1つの財の量のみを変数とする曲線です。たとえば「u=x・y」という効用曲線の式(効用関数)が与えられたとしましょう。するとyの値を固定してxの値だけを変えて効用の増減を確認して分析を行います。
上左図は効用曲面です。y軸の値をy0で固定して、効用曲面に対して垂直に切り目を入れるのをイメージしてみましょう。すると、上右の図のような平面ができました。そして曲面の切り口が描く曲線が効用曲線なのです。
そして効用曲線上に点Bを打ちました。また効用曲線の傾きを示すために接線も引いてあります。その接線の傾きを求めると$\frac{ΔU}{Δx}$であるのが分かるでしょう。$\frac{ΔU}{Δx}$とは限界効用MUのことでした。つまり効用曲線の傾き=限界効用MUになるのです。
限界代替率と限界効用
上ではyの値をy0に固定して考えましたが、xの値を固定した場合でも限界効用MUを考えられます。
x財の限界効用MUx=効用で測ったx財の1単位の価値 y財の限界効用MUy=効用で測ったy財の1単位の価値
ここでMUyに対するMUxの比($\frac{MU_{x}}{MU_{y}}$)を考えてみましょう。MUxとMUyは、いずれも主観的な評価を表しているのでした。つまり$\frac{MU_{x}}{MU_{y}}$は、y財で測ったx財の主観的価値である限界代替率MRSを示しているのです。よって無差別曲線(無差別曲面)上にある任意の点において、$限界代替率MRS=\frac{MU_{x}}{MU_{y}}$が成り立っているのを意味しています。
MUxのMUyに対する比(限界効用の比:$\frac{MU_{x}}{MU_{y}}$)
=x財の1単位の相対的価値(y財で測ったx財の主観的価値)
=限界代替率MRS…①
限界効用均等の法則
限界代替率MRSはy財で測ったx財の主観的な評価であり、価格比$\frac{p_{x}}{p_{y}}$と等しい関係にありました。
$MRS=\frac{p_{x}}{p_{y}}…②$
①と②から$\frac{MU_{x}}{MU_{y}}=\frac{p_{x}}{p_{y}}…③$
これを変形すると下のようになります。
$\frac{MU_{x}}{p_{x}}=\frac{MU_{y}}{p_{y}}…④$
④は「貨幣1単位あたりの限界効用均等の法則」を示す式です。「加重限界効用均等の法則」と呼ばれる場合もあるでしょう。限界効用をその財の価格で割った値が等しくなるのを意味しています。つまり1円あたりの限界効用はすべての財について等しいとの意味合いです。
効用最大化の条件
上の図を見てください。左図には無差別曲線と予算線があって、A〜Eまで5つの点を予算線に打ちました。右図は、A~Eをたどって得られた効用の高さを示す曲線です。言い方を変えれば、予算線の式を無差別曲線の式に代入して得られた効用関数のグラフ(効用曲線)となります。
5つの点のうち、予算内でもっとも高い効用が得られる点はEです。Eで成り立っている関係性を下に整理してみました。下の4つが「効用最大化の条件」と呼ばれます。③や④はそのまま入っていますが、(1)と(2)は上で説明した①や②から導いた条件です。確認してみてください。
(1)$\frac{Δx}{Δy}=\frac{p_{x}}{p_{y}}$:限界代替率MRSの絶対値=価格比
(2)$\frac{MU_{x}}{MU_{y}}=\frac{p_{x}}{p_{y}}$:限界効用MUの比=価格比
(3)$\frac{MU_{x}}{p_{x}}=\frac{MU_{y}}{p_{y}}$:1円あたりの限界効用はすべての財について等しい(貨幣1単位あたりの限界効用均等の法則・加重限界効用均等の法則)
(4)$\frac{ΔU}{Δx}=0$:効用曲線の傾きが0
【参考書籍】
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