クモの巣の調整過程は消費者も生産者も価格変化に即対応

クモの巣の調整過程は消費者も生産者も価格変化に即対応

市場調整のメカニズムは3つの説が挙げられています。ワルラス的調整過程とマーシャル的調整過程につづいて「クモの巣の調整過程」を今回紹介します。どういった調整のメカニズムなのかをまとめていきましょう。

クモの巣の調整過程では生産者の対応が一期後になる

クモの巣の調整過程は、価格が変化するとき需要量の調整はすぐに行われますが、供給量の調整が行われるのに一定の期間がかかると想定された市場調整メカニズムです。グラフを書くとクモの巣のような形になるため、クモの巣の調整過程と呼ばれるようになりました。

クモの巣の調整過程の代表として農作物市場が挙げられます。野菜が生産されると、作った分を売り切るための価格が決まります。ただしこのとき超過供給や超過需要が起こりうる可能性もあるでしょう。市場の状況をみて、生産者が次の期に生産する量(供給量)を決めます。この年にたくさん売れれば翌年はもっと生産量(供給量)を増やし、売れ残りが出れば減反などで生産量(供給量)を減らすのです。

また品不足(超過需要)で価格がいくら高騰していたとしても、野菜はすぐには育ちません。反対に売れ残り(超過供給)で価格が下落したとしても、野菜はすでにできています。生産者が価格のシグナルに適応するのが一期後になるといってもいいでしょう。

クモの巣の調整過程のグラフ

クモの巣調整過程_安定

クモの巣の調整過程で安定する場合のグラフを書いてみました。この年はq0の野菜が収穫できたと考えます。しかしq0では作り過ぎであり、価格がp0と低めに設定されてしまいました。そのため翌年は、高くを上げるために生産量(供給量)をq1に減らします。すると次は品切れになってしまって価格がp1まで高騰しました。つまりもっと生産すればさらに売れて儲かる状態です。

ただし野菜はすぐには育たないため、翌年の生産量(供給量)をq2にする調整しかできません。にもかかわらず生産量(供給量)が増えると値段が下がるため、q2に合わせて価格がp2まで下がってしまいます。それなら生産量(供給量)を減らそうとその翌年はq3しか作らないと生産者は考えます……。

上の説明から、q0→p0→q1→p1→q2→p2→q3→…と変化していく流れがイメージできるでしょうか。q3以降の説明は省略しましたが、上のグラフの形のように、価格と生産量(供給量)の組み合わせがドンドン内側に入っていって、均衡点Eに近づいていくのが伺えます。最終的に均衡価格p*・均衡生産量(供給量)q*にたどり着いた場合は市場調整のメカニズムが安定しているといえるのです。

クモの巣調整過程_不安定

反対に不安定の場合は、上のように均衡点E・均衡価格p*・均衡生産量(供給量)q*から離れるようなグラフになります。超過供給・超過需要は解消されず、むしろ価格や生産量(供給量)の釣り合いがつかない状況が悪化していきます。

クモの巣の調整過程の安定性条件

では、クモの巣の調整過程における安定と不安定の違いはどのような条件で変化するのでしょうか。それは供給曲線Sと需要曲線Dの傾きを比較すれば分かります。

クモの巣の調整過程における安定性条件は「供給曲線Sの傾き(絶対値)が需要曲線Dの傾き(絶対値)より大きい($|\frac{ΔS}{S}|\gt|\frac{ΔD}{D}|)$」なのです。上のグラフでも確認できるでしょう。

またグラフ化されておらず供給関数と需要関数として式が与えられる場合もあるでしょう。そのときは係数に着目して、係数の絶対値を比較してください。式がある場合は、グラフに書かなくても一瞬でクモの巣の調整過程で安定か不安定かが判別できます。

【参考書籍】