独占的競争とは、企業数は多数でも各社が製品価格をある程度コントロールできる状況

独占と完全競争の間に寡占の状態が存在します。2社だけで市場を構成している場合を複占と呼びますが、もう少し企業数が多い場合で「独占的競争」と呼ばれる状態があるのです。どのような状態を指すのかまとめていきましょう。
独占的競争とは、企業数は多数でも各社が製品価格をある程度コントロールできる状況
独占的競争とは、企業数は多数であっても、個々の企業が自社製品の価格をある程度コントロールできる市場の状況といえます。J.ロビンソンの『不完全競争の理論』(1933年)やチェンバリンの『独占的競争の理論』(1933年)の登場によって発展した理論です。
独占と完全競争の両方の特徴がみられる状況のため、“独占的競争”との名前が付けられました。特徴を整理しておきましょう。
■独占的競争と独占が同じ点
・ほかの企業にはないオリジナルな商品を自社で開発・販売している
■独占的競争と独占で違う点
・商品には類似品が多数存在している(→類似品の生産企業との競争が発生する)
■独占的競争と完全競争が同じ点
・多数の企業から市場が構成されている
・長期的には企業の参入や退出が自由
・各企業は他企業の反応を考慮しない
■独占的競争と完全競争で違う点
・各企業の需要曲線は右下がり(完全競争での需要曲線は水平な直線)
独占的競争の各企業が価格支配力を持つ
独占的競争の状態で企業が販売する商品は、多数の類似品が存在するものの、差別化が行われています。そのため値段をある程度上げたとしても需要は失われません。よって「価格支配力」が認められるわけです。
しかし商品の価格が変化したのに類似品の価格が変わらなければ、買い手が移動する可能性は十分にあるでしょう。そのため独占的競争の場合、企業が直面する需要曲線は右下がりではあっても傾きが緩やかである特徴がみられます。上図のDにその様子を表しました。
独占的競争の短期均衡は、主観的需要曲線と実際の需要曲線の交点と利潤最大化点が一致したときに成り立つ
上図の需要曲線Dは、類似品の価格が一定であると仮定して導いたものです。自社の利益を最大化するには、独占の場合と同じく限界収入SMR=限界費用SMCが成り立つ最適生産量QS*を検討します。
そして実際に利潤最大化を達成すると、自社には短期的な独占利潤が発生するでしょう。上図の青く塗られたのが独占利潤に該当する領域です。仮説どおりに他企業が類似品の価格を変えなければ生産した商品をすべて売り尽くせます。
しかし仮説通りにいくときばかりではありません。他企業の企業は価格PS*にもとづいて類似品の生産を調整するでしょう。そこで自社が任意の価格Pxをつけるときに結果的に販売できる量の軌跡をdと仮定して追加検証をします。
dも自社の需要曲線ではありますが、他のすべての企業が自社の価格と同方向に価格を変化させて対抗したときの需要曲線と考えてみるとわかりやすいかもしれません。
もし利潤最大化解Ex*(Qx*,Px*)でDとdが交わるならば、商品がPx*のもとでちょうど自社の需要と一致して売り尽くせます。最適需要Qx*が達成され、短期均衡が成り立つといえるでしょう。
しかし下記のような場合は自社が需要曲線Dをシフトさせてdと点Ex*(Qx*,Px*)で交わるようにしなければ独占競争の短期均衡は成り立ちません。
点Exがdよりも右側
→価格Pxのもとで実際の販売量Qxが、主観的に定めたQx*よりも少なくなる
→売れ残りが発生する
→自社は、他企業の価格を一定として主観的に導いた需要曲線Dを左にシフトさせ、dとDが点Ex*で交わるようにする
点Exがdよりも左側
→価格Pxのもとでは実際の販売量Qxが主観的に定めたQx*よりも多くなる
→品不足が発生する
→自社は、他企業の価格を一定として主観的に導いた需要曲線Dを右にシフトさせ、dとDが点Ex*で交わるようにする
独占的競争の長期均衡
長期的には企業の新規参入は自由とされていました。代表的企業に独占利潤が発生している場合、儲けたい企業が他にも参入してきます。すると需要曲線Dは次第に左にシフトするでしょう。
そして上図のように、長期平均費用線LACと需要曲線Dが接するところまで移動します。移動は独占利潤がゼロになるまで止まりません。上図のように価格PL=長期平均費用LACが成り立つ場合が、独占的競争の長期均衡といわれます。
ちなみに完全競争の長期均衡は、平均費用曲線LACの最低点の示す組み合わせでした。しかし独占競争の場合は、平均費用曲線LACが右下がりになっている部分にあたります。つまりコストがまだ高く、生産能力の過剰が認められる点です。そのため独占競争の長期均衡が成り立ち独占利潤が消滅したとしても、効率的な組み合わせとはいえないのに注意しましょう。
【参考書籍】
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